令和8年度国家予算案をめぐる参議院審議は、全体として迫力に欠ける内容だった。政権与党は野党側に十分な審議時間を与える姿勢を見せたものの、野党の質問には鋭さが乏しく、準備不足を感じさせる場面が目立った。
かつて参議院は「良識の府」と呼ばれ、歯に衣着せぬ質問を行う議員も少なくなかった。しかし、そうした有能な議員は早々に衆議院へ転じる傾向があり、現在の参議院は、国権機関としての独自性を失いつつあるように見える。
参議院の存在意義をめぐっては、比例代表制を廃止し、かつての全国区を復活させるべきだという意見がある。一方で、いっそ衆議院に一本化したほうが、より生産的な審議ができるという主張も聞かれる。
比例代表制をめぐっては、先の衆議院選挙でも与野党双方に混乱が生じた。与党側では予想以上の大勝により比例区の候補者が不足し、自民党以外へ議席を配分せざるを得ない事態となった。野党側でも、比例区当選者をめぐる調整が難航し、掲載順位を巡って対立の火種を残した。
また、選挙制度については、衆議院の小選挙区制への批判も根強い。中選挙区制の復活を望む議員も少なくないが、実現には議員定数削減などの課題も伴う。制度改革には、有権者目線に立った冷静で合理的な判断が求められる。
こうした現状について考えていた折、石原慎太郎の著書『国家なる幻影』を読み返した。そこには、比例代表制に対する厳しい見解が示されている。
石原は、かつての参議院全国区について「比較的開かれた制度」であり、既存組織や政治的背景を持たない人物にも挑戦の余地があったと述べている。一方、比例代表制については、政党幹部による密室的な候補者順位決定を招き、派閥政治を強めたと批判する。
さらに、有権者は人物本位で投票したいと考えていても、政党色の強い制度では候補者の関心が名簿順位の行方にのみ注がれることでそれが難しくなると指摘している。そして、「選挙は実力という開かれた公理が成り立ち得る」としたうえで、比例代表制度はそれを損なうものだと結論づけている。

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